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「北欧・中欧都市環境・景観美化調査団」に参加して

レポート 2005/10/25

訪問期間:2005/10/25~11/02
訪問先:コペンハーゲン・ブダペスト・タリン

訪問した3つの都市について私が感じたことは、どの都市も、低層で重厚感ある建物と自然との調和がとれており、建築物自体の美しさだけでなく、「街全体の景観」が素晴らしいということであった。
戦後、我が国は、荒廃した国土を再生して豊かな生活を実現するため、効率と生産性の向上を目指して努力した結果、目覚しい経済発展を遂げ、世界有数の経済大国となった。
しかし、経済発展が優先され、実質的に景観の維持が無視されたため、我が国を代表する古都京都でさえ、様々な景観の問題を抱えることとなった。
一方、コペンハーゲンの運河沿いにある「ニューハウン地区」は、かつて、倉庫と船員用のホテルが建ち並び、風紀が悪く、非常に汚れていたそうである。しかし、今日では、街全体が一新され、高級レストラン街に変わり、多くの観光客で賑わっているとのことであった。また、古いサイロや倉庫をマンションやホテルなどに再生し、美しい街並みを維持しつつ、現代の生活に対応できるような努力がなされていた。
2004年6月1日、我が国で、「景観緑三法」が全面施行された。この法律は、良好な景観の形成に関する基本理念や国や地方公共団体の責務を定めた我が国で初めての景観についての法律である。
我が国でも、これを機に利便性や経済性に重点を置くのではなく、緑豊かな「美しい景観」を創造できるよう、独自の方法を見出して行くべきである。
伝統的な文化遺産を数多く残す京都や奈良は、寺や神社などいくつかの文化財が世界遺産として登録されている。しかし、エストニアの首都「タリン」やハンガリーの首都「ブダペスト」のように市街地そのものが世界遺産に登録されている訳ではない。
京都や奈良も「美しい街並みの保存」をテーマに、寺や神社を含む市街地全体の調和を考えて保存していけば、日本独自の木造建物文化都市として、今以上に美しい景観を創造できるはずである。
タリンでは、建物の高さ制限を設けることによって、旧市街地を望む景観維持を実現しており、建物そのものの美観を守るだけでなく、市街地全体の景観を守る努力がなされている。
ブダペストは、ドナウ川に架かる「くさり橋」を境にして、西側が「ブダ地区」、東側が「ペスト地区」と呼ばれており、「ブダ地区」には王宮などがあり、「ペスト地区」には官公庁や劇場などがある。
夜になると、これらの建物がライトアップされて美しい景観が現れ、その美しさは、「ドナウの真珠」と言われている。この美しい景観は、古い建築物と現代建築物の調和に因るもので、世界遺産にも指定され、世界中の都市に共通する課題の答えを示唆しているように思う。
日本でも、数年前から、「街並み」をライトアップすることで景観の美しさをアピールし、観光客の誘致に成功している例が報告されている。比較的簡単にできることから、街並みの景観美化に慣れることで国民の意識改革を行い、快適で、暮らし易く、美しい景観を持つ国として世界に誇れるようになりたいものである。

株式会社システムサービス
取締役副社長 中島 学